地球の温暖化のペースは加速しており、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2021年に、地球の気温は予想よりも速く上昇しており、平均気温は2030年頃には産業革命前のレベルを1.5~1.6度上回ると予測していると警告した。この課題に対応するためには、世界の炭素排出量を2030年までに半減させ、2050年までにカーボンニュートラルにしなければならない。
スポーツの世界では、地球村の一員として、スポーツ界は単独ではありえない。実際、国際的なスポーツ界が環境の持続可能性に関心を持つようになったのは、1990年代にさかのぼる。国際オリンピック委員会(IOC)は1995年にスポーツと環境に関する委員会を設置し、1996年の憲章に環境の持続可能性を盛り込み、1999年にはオリンピック・ムーブメントが持続可能性の話題を中心的なステージに上げ、開催都市の責任と評価メカニズムを規定した。
21世紀に入り、国際サッカー連盟(FIFA)は2006年のドイツ・ワールドカップで、大会のカーボンフットプリントの算出を開始した。その後、2011年と2012年にFIFAは包括的な持続可能性戦略を策定し、2005年に導入された「サッカーのためのグリーンゴール」プログラムの改訂と実施を続けている。本稿では、FIFAとカタール・ワールドカップの環境持続可能性に関する取り組みについて詳しく紹介する。
(i) カーボンフットプリント
気候変動に対するコミットメントを果たすため、FIFAは2005年9月、ドイツ連邦政府および国連環境計画(UNEP)とグリーンゴール協定を締結し、2006年のWEFA組織委員会に技術およびプロモーション支援を提供した。FIFAは、準備過程において、水、廃棄物、エネルギー、輸送の4分野で評価目標を設定し、炭素排出量の算出を開始した。さらに2009年、FIFAは、2018年と2022年のWEF大会の招致活動において、カーボンフットプリントの追跡調査とカーボンオフセットの要件を盛り込むよう要請した。
同年、FIFAが中心となって、国際的な個人スポーツ連盟として初めてGHG排出量計算報告書を発表し、その年の二酸化炭素排出量は48,500トン(二酸化炭素換算)となった。当時、カーボンフットプリントの算定はまだ概算の段階だった。公式報告書では、2010年サッカー世界選手権南アフリカ大会の総炭素排出量は二酸化炭素換算で48,400トンだったが、試合会場へのファンの輸送による炭素排出量は含まれていなかった。アーンスト・アンド・ヤングの報告書によると、大会のカーボンフットプリントは二酸化炭素換算で275万3,000トンで、そのうち輸送による排出が全体の85%以上を占めていた。
WEFの準備サイクルは通常数年で、インベントリーの期間は開催3年前から閉幕まで続く。たとえば、ブラジルで開催された2014年WFCの場合、インベントリーは、2013年インターコンチネンタルネーションズカップ(ICN)の準備期間と、フットボール・ホープ・フォーラムやICNガラディナーなどの周辺イベントをカバーする2014年WFCの会期中に分けられた。FIFA、ブラジルWFC組織委員会、MGM Innovations Brasil Ltd.は共同で、ブラジルWFC組織委員会、MGM Innovations Brasil Ltd.の排出量に関するサマリーレポートを発表した。FIFA、ブラジルWFC組織委員会、MGM Innovations Brasil Ltd.は共同で、2014年ブラジル世界サッカー選手権のカーボンフットプリントに関する総括報告書を発表した。
ロシアで開催される2018年サッカー世界選手権のカーボンフットプリントは、二酸化炭素換算で約216万トンと推定され、その90%が大会期間中に発生する。参加メンバーの輸送(二酸化炭素換算で約160万トン)と宿泊(二酸化炭素換算で約25万トン)が、二酸化炭素を排出する主な活動項目であり、輸送項目が全体の77%を占め、国際輸送が61%、都市間輸送が21%を占めている。2022年WEFのカーボンフットプリントは二酸化炭素換算で360万トンと推定され、インベントリ期間は2011年4月から2023年6月までで、そのうちこのうち75%(約270万トン)は大会期間中に発生し、参加メンバーの移動と宿泊が大きな二酸化炭素排出源となっている。表1は、近年のWFCのカーボンフットプリントである。
表 I. 過去のサッカー世界選手権における二酸化炭素排出量の概要(単位:二酸化炭素換算トン)
2006年|2010年|2014年|2018年|2022年
炭素排出量|35万|275万|273万|216万|363万
出典:Team Collation
(ii) FIFA環境サステイナビリティ戦略
サッカーワールドカップのカーボンフットプリント目録は、環境の持続可能性を推進するFIFAの活動の出発点にすぎない。サッカーの世界的な統括団体であるFIFAは、サッカーの世界的な普及に尽力しているだけでなく、そのイベントや組織の加盟国を持続可能な目標に向けて動かしている。